丘に吹く風

時には地を這うように、時にはささやくように

世界に誇る名車(11台目)

yonkichi, · カテゴリー: バイク

1985年から北海道は開陽台にあがるという事が、旅のひとつの目的となった。
私のウェブサイトのテーマとなっている丘に吹く風、というのがまさにここでの日々の事だ。このテーマについては、何度書いても書き足りない程の思い入れがあるのも確かだ。そして、そんな事を、既に20年近く続けてきたが、昨年とうとう1度も丘に上がらないという年があった。
丘にはいろいろなテーマがあった。その中で、1986年に突如として駐車場の一角にレンガ色の建物が建った。それが、多くの人が開陽台に訪れると足を向ける、ハイジーの家という喫茶店の話も長くなる。
ハイジーの家は冬の間はお休みになる。その1シーズンのお疲れ会を兼ねて、閉店パーティなるものが毎年この建物で行われてきた。今でこそオーナーのかあさんの旦那さんが経営する工場でそれは変わらず行われているが、武佐サマに初雪が降る頃、その閉店に立ち会うべくこの時期だけ集まる旅人もいる。
展望台が新たになり、ハイジーの家が無くなるという話が、ある年常連のキャンパーの中で話題になり、それは事実とはちょっと違ったのだが、東京にいる皆で、これはいかねばなるまいという話になり、釧路行きの飛行機を取り、10月末に行ったこともあった。
そのあたりから、バイクで秋の道東を走りたくなった。しかし、その時期に1週間の休みはなかなか取れない。という事で、私が何十回も利用した航路、東京(有明)-釧路のフェリーに無人車でバイクを乗せ、釧路行きの飛行機で人間は移動し、釧路西港でバイクを引き取り、R272を通って丘にあがるというツーリングを考えた。
しかしフルサイズのバイクを持っていく必要はないし、小排気量車にも興味があった時期だったせいか、友人が乗っていたCT110やMD90、Cub90CUSTOMなど以前から気になっていたカブ系が欲しくなった。そうすれば、会社帰りに船に乗せ、会社帰りに引き取って帰る事ができる。
いろいろ考えた挙げ句、やはりクラッシックかつトラディショナルな現行モデルのデラックス、それも90ccのモデルである、Cub90DXを手に入れ、キャリア上にはポリカーボネイト製の割れにくいボックスをボルトで固定した。またリアサスにはレーシングショックを入れ、ミラーはラジカルミラーをつけてみた。
結果的に秋の北海道を2度、夏の北海道を1度カブで走った。アベレージが高い北海道の国道でも、しっかり流れに乗れるパフォーマンスを持ったCub90DXは、思いの外、大排気量やハイパワーに慣れた体でも楽しく旅をする事ができた。
この時は友人の結婚式が和琴で行われる前日。そう、忘れもしないハイジーの家が新展望台の中に入って初めての年、1995年の7月。
かあさんはいろいろ周辺で調整が続き疲れ果てていた。私はやっぱり新しくなった開陽台に馴染めず、本当は1泊していくつもりだったのだが、どうしても荷物を下ろす気になれなかった。そんな私をみて、かあさんはとても悲しそうだった。ごめん、と何度も謝った。自分の中の整理がつくのか、この時はわからなかった。
しかしその1カ月後、XR250Rで再訪した時に私は数日この丘で過ごした。その気持ちの変わりようは何だったのか。それは、やはり私と同じようにこの丘を愛する旅人の友人がこう言ったからだった。
「うん、やっぱりここはいい所だ」
そうなんだよ。やっぱりいい所なんだよ。武佐サマも、景色も変わらない。
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