丘に吹く風

時には地を這うように、時にはささやくように

自分のフネ

yonkichi, · カテゴリー: あれこれ

最初に乗ったのは、友人パジャンカだった。理想的なフォールディングカヤックで、スタイルも美しかった。当然カナヅチな私は川を最初に下る事なんか考えもせず、ある夏開陽台で生活している時、和琴に遊びに行った時、それは実現した。
開陽台からどこかに行くという事は、知床ファイアー…もとい、知床峠を経由してぐるっと半時計周りに一周してくる半日コースや、根室へ蟹を買いに行ったりエスカロップを食べに行ったり、釧路の和商市場で昼飯を食べてくる1日コース、熊の湯や川北、からまつ、薫別など温泉に入るついでに林道を走って来ようという午後コース、周辺の秘密の林道を走り繋ぐひたすら林道アタックコースなどのバイクで回るコースや、クテクンや武佐岳への登山コースや、忠類、西別をはじめ、標津や風蓮の支流の小さな川で釣りをしながら歩くコースなど、山ほどあるエリアである。
海は標津・別海が比較的近い。ここで栗蟹や北海縞海老がおいしい。湖といえば、一番近くて裏摩周展望台からの摩周湖だ。神の子池はちょっと例外。このように環境としては恵まれたすばらしい地だ。なので開陽台をベースにして、道東を満喫する事ができる。
結構な確率で、開陽台から下らない日があるのだが、たまには少し遠出をする。といっても片道1時間程度しかからないが、静かで大きい屈斜路湖に突き出す和琴半島の根元、和琴半島湖畔キャンプ場はそのゆっくり遊びに行くには最適な場所である。
ここには多くの友人がいる。いつ行っても誰かしら居るという時代だった。和琴レストハウスのスタッフも知り合いだし、いわゆるほっとできる場所の一つだ。しかしアプローチが楽というのと、ロケーションが素晴らしく、有料ではあるが安い為、いつも大勢のキャンパーがテントを張っている。歩いてすぐの隣接した温泉や、弟子屈の町までも比較的楽に行ける為、長期滞在でもとても快適だ。
この場所で多くのドラマが生まれた訳だが、長期滞在のキャンパーの中には、道東に腰をおろすものが増えていった。ある年の秋に、友人がここで結婚式を挙げた。私はスーパーカブで入り、結婚式参列の為に3泊を過ごし、その1カ月後あらためてXR250Rで再度1週間強のツーリングをした年。初めて静水だがカヌーを体験した。
音が打ち寄せるささやかな波の音だけが聞こえていた。ぽちゃん、ぽちゃんという音の中、ズズっというフネの底がすれる音がし、すーっと中島の方向に滑るように進んで行った時の驚き。パドルが水に入り、出る時の音以外何もしない中、和琴半島の先へむけて漕いでいった。
こんなに気持ちのよい乗り物があったのだろうか。喫水が浅いので、すぐ真横が水面だ。残念ながら屈斜路湖は深くて水の色がそれほど透明感をもってない為、深さがわからない分少々恐怖感はあるのだが、しばらく操作しているうちにこの日は風も波もなく、そう簡単に沈する事もないと思う事ができ、楽しかった。
たまに漕ぐのをやめ、空を仰ぐ。青空の下を走る雲がゆっくりと動いている。どこかで鳥のさえずりさえ聞こえる。エンジンが回っているバイクとはまったく違う世界だった。この世界に圧倒され、まだ川を下った事もないくせに、東京に戻り、いきつけの登山用品店で割引が効く事を確認しつつ、注文してしまった。
今はなきリバースチールマジェッタ1。船体布はハードなタイプにし、3ピースに分解できるパドルと、ニンバスのライフジャケットをつけて、購入した。自分のバイクどころか、自分の船が持てて、それだけで嬉しくてすぐにでもどこかの湖に行きたくなった。
進水式は本栖湖の浩庵キャンプ場だった。おっとさんがアリーの311を持ち込み、沈はこうやるんだと体を張って見せてくれた。私はスパークリングワインを買っていって、バウにかるくかけて進水式をし、小雨まじりの中少しだけフネを漕いだ。その後、椎名誠監督の映画、「あひるのうたがきこえてくるよ。」の舞台になった福島県の沼沢湖や、栃木は中禅寺湖の菖蒲ヶ浜キャンプ場に泊まりながらカヌーのある休暇を楽しんだ。
この写真は菖蒲ヶ浜キャンプ場で乗った時。なぜかフネを出す時は晴天が殆どない。
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土砂降りに会う確率

yonkichi, · カテゴリー: あれこれ

薬局に寄りたくて、きっちり定時で会社をあがり、ゆりかもめに乗る。レインボーブリッジを渡る頃、都心の空には黒い雨雲が垂れ込めていた。そういえば今日は関東北部では午後から大気が不安定になり、局地的な大雨が降る可能性がある、とテレビの天気予報で言っていた。この時間に帰れば大丈夫だろう。
ただこれまでも運がわるいというか、あと少しという所で強烈な夕立にあい、1時間くらい足止めを食らったり下着までびしょ濡れになりながら帰った時が何度かあった。あとほんの5分。そういう状況にあうという事は、本当に自分がツイてない人生なんだと怒りと落ち込みが一緒にきたりする。
まさかな、と思っていたのだが、今日もまさに家の一番近いバス停を降りた途端、ものすごい雨が降ってきた。走れば3分、歩いても5分なのだが、そのあとちょっとが運命を分けた。下車したバス停前の郵便局の軒下で様子をみていると、少しだけ息をついたように雨足が弱まった。今なら走って帰れると思ったが、反対車線の屋根のあるバス停までいかないうちにもっともっと強烈な土砂降りと突風がやってきた。
反対車線のバス停は結構大きな屋根がついていた。ここでやり過ごすしかないと思っていたが、雨は真横に降ってくる。既に鞄もシャツもパンツもびっしょりだ。それでも1分もしないうちにすっかり洋服は濡れてしまった。仕方なく濡れて帰ろうと思い、歩きだしたのだが、もうバケツをひっくり返し、その中で突風が吹いているようなもので、20歩進んだ所で呼吸もできないほどの風と前がまったく見えないほどになり、倉庫の軒のしたに隠れた。それでも軒はあまり意味をなさず、容赦なく雨がかかる。
胸ポケットに入れていたシリコンオーディオが危険だ。鞄の中にはパソコンも入っている。しかしここに居ても濡れるだけだ。とにかく雨と風の中をとぼとぼと歩いた。虚しい気持ちとなんでこんな目にあわなければならないんだという怒りを感じながら、家になんとか着き、風呂にすぐに入った。芯まで冷えきった体と気持ちが落ち着くまでしばらく時間を要した。
ここまで洋服を着て濡れたというのは、このような夕立にあった時か、カヌーで沈した時位だ。カヌーで沈した時はそれなりに覚悟ができているのだが、今日みたいなのはやりきれない…
風呂に漬かりながら思い出した。カヌーといえば、私も廻りの友人がカヌー遊びをしていた時、丁度野田知佑さんの本も読んでいた事もあって、欲しくなった。そしていつか、釧路川を下るんだと思っていた。とはいえ、カナズチな私がそんな事本当にできるのか、と自問自答をしつつ…
カヌーをやっていた友人は、やはり和琴の友人達だった。中には北海道の主要な川を全て下った者や、ガイドをやっているのも少なくなかった。私たちが丘の人であれば、彼らはやはり水の人、湖や川の人という雰囲気だった。そしてとうとう彼らの指導を受けながら、釧路川を下る日がやってきた。
屈斜路湖から釧路川の流れ込みに入り、美登里橋までの短いコースだ。数艇のカヤックと、2艇のカナディアン。それは楽しい初体験だった。蛇行して流れが溜まっている内側などには、沢山の鱒がホバリングしているようにじっとしていた。喫水の浅いカヤックからは手が届きそうだ。倒木がある所はガイドの友人が教えてくれる。どこに何が沈んでいて、コースをどう取るかは全て頭にたたき込まれているようだ。私はそれについていくだけだが、エンジンもなく、ただ浮かびながら流されつつ、コントロールする楽しさを満喫していた。
終点近くで、友人のカナディアンが岸にひっかかり沈した。それに乗っていたチャボという和琴キャンプ犬が死に物狂いで犬カキしつつ、丁度近くを通った私のカヤックに向かってきた。私は手を伸ばし、チャボの両前足の脇を抱くようにして、自分のコーミング部に引きずりあげた。チャボは川の冷たさか、恐怖からかわからないが、ガタガタ震えていた。私の腹にぴったりと体をつけ、じっとしていた。
沈した飼い主、松ちゃんと、眼鏡を流してしまったじんじんさんは、笑いながら船を引き上げていた。青空が川面に映る午後の釧路川で、笑い声が響いた。濡れるのも、たまには良いかもしれない。チャボはいい迷惑だったのだろうが…
鞄の中はこれでもかというほど雨が入り込んでいた。靴も水没した為、当分乾きそうもない…
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林道と芸能人

yonkichi, · カテゴリー: あれこれ

ナイナイサイズという、ナインティナインが司会のテレビ番組で、寺さんが登場すると聴いたので、忘れずに観た。
寺さんとは、寺崎勉氏の事。野宿ライダーとしてカリスマ的な存在でもあり、ファンの集まりとして寺崎組がある。私は実際にあったことは1度しかない。また寺さんの実家に知り合いが行くという時、誘われたのだがどうしても都合がつかず、断念した事があったが、まだ機会はあるだろう。一番最初にRAMBLE寺さんのウェブページは私が作ったのだが、その後は現在に至るまで全て巨匠が担当している。
今回ナインティナインの矢部氏がバイクに乗り、山梨の山の中をオフロードバイクで走りまわるという企画。免許持っていたのは驚きだが、やはり姿をみているとニーグリップも腕の使い方も殆どバイクに乗ったことがないような感じ。最近お笑いの人でもバイクに乗っている人がたまに番組の中で映ったりするが、気合の入ったバイク乗りは岩城滉一氏とか藤岡弘氏位の人を指すのだが、まあ矢部氏はキャラというのもあるので、充分ではないか。
ただ番組が進んでいく中で、ライディングの時にみせる表情がたまに真面目になっている時もあったので、このあたりはバイクという乗り物の性質上、乗りながら演技をするなんていうのはなかなか難しいものだから当然だろう。反面、素の表情がなかなか面白い。
これは厳しいだろうと思われる大きめの石が敷きつめられている川幅がある早川を渡るシーンや、ガレた急坂を登るシーン。怪我しなくてよかったというのがディレクターの本音ではなかったろうか。同行した寺崎組メンバーがパフォーマンスを見せてくれて面白かった。寺さんも思いの外、お茶目なパフォーマンスで番組はとても面白かったと思う。
最新号のアウトライダーでは、久しぶりに巨匠寺さんがコンビを組んでナチュラル・ツーリングをやっている。何だか昔のアウトライダーの匂いがしてとても楽しい記事だった。お二人ともあれから随分お歳を召したのだろうが、やっぱりカッコいい。まだ現役のバイク乗りだ。
実際、自分が林道を走っているシーンはなかなか残せない。家にXR250Rで林道を走っているシーンのビデオがあるが、自分を撮影する場合は三脚にビデオカメラをたて、そこを往復してあとで編集したりする事もした。大抵意識しすぎてギクシャクするか、わざとらしくなってしまうのだが、誰も見ていないのだからまあいいだろう。旅人は結構そういう事を皆やっているのではないだろうか。ソロでの旅だからこそ、そういう事も気兼ねなくできた。
何だかテレビをみていて久しぶりに林道を走りたくなった。写真は関東近郊では一番走った中津川林道の長野県、山梨県、埼玉県の県境、三国峠付近で撮ったもの。後ろの荷物の上に大きい鍋が裏返しに載っている。ここは三国峠から秩父方面に抜ける方がジャンピングスポットが沢山あって楽しいのだが、11月晩秋の廻り目平キャンプ場で5年連続秋のキャンプをやっていた時、これからキャンプ場に入る直前のものだ。この夜はチゲ鍋の宴。実はこの付近にある川上村には、学生時代レタス農家に住み込みで仕事をした経験があったりする。
ライディングウェアは原付の頃思い切って買ったクシタニはエクスプローラーのツアージャケット。転倒の跡が数カ所残る、寒い時期の戦闘服だ。
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